あのバイオリン少女の番組は

現代アートとヴァイオリン少女 - Ohnoblog 2 を読んで。
読み始めて,「あぁ,そんな五嶋みどりを取材した番組があったな」と思っていたら,本当に五嶋みどりのことでビックリ。あの番組を覚えていた方がいらしたとは。

「ステージママだな」

こういう風に言った人がいるのは,ちょうどその頃,宮沢りえの母親がステージママとして話題になって,賛否両論があったからではなかったかと思う。
五嶋みどりの母親も確かにステージママではあった。しかし「娘を売り出す」というよりも「娘にいろいろな経験をさせる」というのが主眼であるように見えた。母親もバイオリンを弾くが,その母親が教えるだけではそれ以上にはなれないということを母親自身が知っており,他に師匠を求めていく。この母親がすごいのは,その師匠を海外にまで求めていくということだった。
番組では五嶋みどりが師事したバイオリニストへのインタビューもあって,「好きな曲を弾いてみなさいと言ったら,シャコンヌを弾き始めたんですよ。あれには驚いた」というようなことを言っていた。そして,そのきっかけとなったカセットテープの音が流れた。母親は,娘の弾くバイオリンの音を録音して,教えを求めるために海外に送っていたのだった。
娘の方もいろいろな経験を通してからなのか,小さい頃から肝が据わっていた。あるオーケストラとの共演で,演奏中にバイオリンの弦が切れるというアクシデントに見舞われた。そこでオーケストラ全体は演奏を中断。コンサートマスターのバイオリンと持ち替えて演奏を続けた。そして,どういうことかまたもや弦が切れ,オーケストラも演奏を中断。しかし少女は冷静に,今度はアシスタント・コンサートマスターのバイオリンと持ち替え,ついには完奏したのだった。演奏後,コンサートマスターの楽器を褒めていたそうで,すでに演奏家としてオーケストラのメンバーと対等であることを自他共に認識している様子が伺える。

このエピソードは「タングルウッドの奇跡」と呼ばれ,大きな話題を呼んだ *1。持ち替えたバイオリンは大きさが違ったのだそうで,どこまでも驚かされる。楽器の大きさが違えば,弦を押さえる場所も違うので,演奏を続けるだけでも難しいのに,そこに芸術的な要素を加味していくというのは,もう何がなんだか分からない世界である。この YouTube の映像は,その番組で紹介されていたものよりもずっと長い。
番組を見ていたとき,バイオリンの弦が切れてオーケストラが止まるところで,胸が締めつけられて涙が出そうになったことを思い出す。それから五嶋みどりを注目するようになった。
ここまで鮮明に記憶しているのは,実はたまたまその番組をビデオに録画してあって,繰り返し見たからである。しかし,残念なことに,その録画ビデオをもう一度見てみようかと探してみたが,見つからない。10年ほどまえに知人に貸したことまでは覚えているのだが,返してもらったかが定かではないのだ…。
このステージママ五嶋節は間違っていなかったようだ。息子の五嶋龍*2もバイオリニストとして成功している。

母と神童―五嶋節物語 (小学館文庫)

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