まねはできないが何とかやってみたいと思わせてくれる「英語コンプレックス 脱出」

中島義道著「英語コンプレックス 脱出」を読んだ。苦難をあえて追い求める姿に,おかしみと感動を覚える。
思わず笑ってしまうエピソードが多数。

こうして,自分の無能力をこまごまと語りつづけるのもいかにも悪趣味だが,――聡明な読者はわかっていると思うが――本書執筆の主要動機はまさにここにある。世の中の人々(とくにインテリども)が,いかに自分の語学力の「実情」を語らずに,ごまかしているか,そのことをあえて自分を出しにして暴きたいのだ。そのことによって,英語コンプレックスを営々と築いてきたわが国の文化に風穴を開けたいのだ。一種の自爆テロである。(p. 216)

「一種の自爆テロ」には笑ってしまうが,とんでもない努力があったからこそ,「無能力」であることをさらけ出せるのだ。
英語コンプレックスというのは,英語ができない人だけでなく,英語ができる人でも持っている。英語が「できる」「できない」を考えている時点で,すでにコンプレックスになっているのだ。英語コンプレックスの解消につながった生き方として,次の5つを上げている。

  1. 無理につじつまを合わせることをやめる。
  2. コミュニケーション・スキルを高める。
  3. 自分をあえて困難な立場に追いやる。
  4. コンプレックスを(ある程度)肯定する。
  5. 人生で最も大切なことを見失わない。
(p. 221)

自分をあえて困難な立場に追いやるという姿も興味深い。

第三章の私の英語歴ないし欧米語歴を読めばおわかりのように,私は苦労をしなくていいのに,あえて苦労に突進するところがある。もっとラクに生きられるのに,あえて困難を選ぶところがある。これはいわば一つの「才能」であろう。私はラクをして何かを得ることが嫌いなのだ。何かを得るためには,努力に努力を重ねることが好きなのだ。そのあげく,努力が報われないとしても,そのほうが好きなのだ。(p. 225)

これは英語に限ったことではないのだ。
「英語コンプレックス 脱出」は,明日からやることに勇気を与えてくれる本である。

英語コンプレックス脱出 NTT出版ライブラリーレゾナント004

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